どうしてこうなった!?映画『ドラゴンボール エボリューション』
『ドラゴンボール』という漫画があります。
『Dr.スランプ』などでも知られる鳥山明による、言わずと知れたバトル漫画の金字塔的作品です。
その人気は国内だけに留まらず、世界的にも絶大な人気があり、海外の人に「知っている日本人は?」と聞くようなテレビの企画では必ずと言っていいほど鳥山明の名前が上位に入っています。
私も物心ついた頃からドラゴンボールを観て育った生粋のドラゴンボーラーです。
ていうかサイヤ人です。
そんな我々ファンのドラゴンボール愛を完膚なきまでに踏みにじってくれたのが、ハリウッドで「実写版ドラゴンボール」と銘打って制作された『ドラゴンボール エボリューション』です。
ドラゴンボール エボリューション
『ドラゴンボール エボリューション』は2009年に公開されました。
監督はジェームズ・ウォン、脚本はベン・ラムジー、制作・配給は20世紀FOXです。
公開されるやいなや、全世界で批判の嵐が巻き起こったことは有名な話で、その後、脚本を手掛けたベン・ラムジーは海外のドラゴンボールファンサイトで謝罪文を載せるほどでした。
そこで彼は「自分はドラゴンボールファンではないのに、大金に目がくらんでしまった」と言っています。
さて、既にこの作品の悪評は語られ尽くした感がありますが、改めて原作ファンとして書いていきたいと思います。
キャラ崩壊
何が悪いって、やはりキャラが崩壊してることでしょう。
登場人物たちは原作と同じように「悟空」や「ブルマ」、「亀仙人」などが出てきますが、ツッコミどころ満載です。
悟空
主人公でありながら、おそらく一番原作とキャラがかけ離れています。
原作の悟空は、誰に気兼ねすることもなく、物怖じしない性格です。
まるで赤ん坊のように純粋な心を持っているため、金や女などに興味がありません。
地位や富で人を判断することがないため、誰に対してもざっくばらんで、誰に対しても優しい、それが悟空なんです。
だからこそ、悟空の周りにはいつしか仲間が集っていったのです。
しかし、この映画の悟空は気弱ないじめられっ子です。
そして拳法の修行をつけてくれているじいちゃんにこう言います。
「どうせなら女の子にモテる方法を教えてよ。好きな子の前でも口ごもらずに喋れる方法とかさ」
そして、パーカーを着てマウンテンバイクに乗って颯爽とハイスクールに登校する悟空。
開始5分ですでに原作の悟空の面影がありません。
パーカーのフードの色合いが微妙に亀仙流道着の色合いに似ているのが鼻につきます。
そしてクラスメイトのアジアンビューティー、チチに気があるようです。
ロッカーが開かずに困っているチチを物陰から見て、「気」の力でロッカーを開けてあげます。
「気」とサイコキネシスが混同されているようです。
そしてアメリカ映画でよく見かけるお約束パターンです。
チチ「今夜ウチでパーティーがあるの」
もうこれドラゴンボールじゃなくて、マーベル作品の一つってことにしちゃえばいいのに。
いや、それはマーベルに失礼か。
ブルマ
ビビりながら逃げてばっかりだった原作のブルマと違って、この映画のブルマは勇ましい女戦士って感じです。
敵と銃撃戦を繰り広げたりして立派に戦っています。
きっとカプセルコーポレーション令嬢という肩書は偽りで、特殊な訓練を受けたエージェントか何かなんでしょうね。
亀仙人
悟空のじいちゃんである悟飯の師に当たる人なんですが、明らかに悟飯より若いです。
髪はフサフサで白髪の一本も見当たりません。
年のころは50歳くらいといったところでしょうか。
そして「亀ハウス」は大都会の傍らの小島に建っています。
原作の離島感を出そうとしたのでしょうが、とてもシュールな絵になってしまってます。
そして「亀仙人」と呼ばれているのに、亀もいないし、亀の甲羅も背負ってません。
ホントに普通のおっさんです。
悟空もそうなんですが、落とし穴に落ちても自力では脱出できません。
ヤムチャ
この映画のヤムチャは拳法が使えず、銃で戦います。
もちろん狼牙風風拳も使えません。
てか、コイツいる?
大猿
原作でもサイヤ人が変身し、地形が変わるほど大暴れする大猿ですが、この映画ではピッコロの手下という設定になっていて、さほど大きくなりません。
アンドレ・ザ・ジャイアントくらいです。
ピッコロ
この映画のボス的存在。
ただの『マスク』でした。
まとめ
既に多くの人が言っていることなんですが、『ドラゴンボール』にする必要はないですね。
作中でのドラゴンボールの重要性もあまりなかったように思えます。
よくもまあ、これだけ世界的に注目されている作品の名を冠しながら、この程度のクオリティで世に出せたなという感じです。
スタッフ陣にドラゴンボールファンが一人もいなかったのでしょうか?
それとも監督や脚本家が頑として周りの意見を聞かなかったのか?
そして『ドラゴンボール』というブランドを抜きにしても、正直あまり面白いとは言えない映画です。
監督も脚本家も、この作品以降、映画製作に携わったという情報が出てこないことから、彼らにとっても、ただの黒歴史では済まないほどの痛手になってしまったんでしょうね。